出現「でえらんぼう」(1)

 全国に大男「でえらんぼう」の伝説はたくさんあります。ダイダラボッチ、デエラボッチ、ダイダラボウ呼び方も様々ですが、みな同じ大男を意味するようです。

 こちら佐久地方では、浅間山に住んでいたということですので、たくさんの言い伝えが残っているようです。

 

 東京湾から土を運んで浅間山を造っている途中、うっかりこぼしてしまった土が小浅間だそうです。

 自分が住んでいるこの地籍は、以前は「三ッ足」と呼んでいました。浅間山から蓼科山まで三歩で行ってみせると言って、三歩目の足が蓼科山に届かずに足をついてしまったところが自分が住んでいるこの地籍なんだそうです。悔し紛れによろけた大男は、四歩目の足が湿地にズブズブ入ってしまいました。ここは今でも「足っつぶ」と呼ばれる沼地があるということです。

 

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 佐久市千曲川に架かる橋で、上流から数えて11番目に「枇杷島橋」という橋がありますが、この橋の欄干には、旧浅科村出身の切り絵作家「柳沢京子」さんの「でえらんぼう」の民話と絵のレリーフが取り付けられています。

 

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「大男」「河童」「妖怪」と聞くと、いたずらばかりしている悪者というイメージ持つ方が少なくないと思いますが、自分の中の「でえらんぼう」力持ちで、おちょこちょいで、人の良い、見上げるような大男です。

 

 この童話も、「小説家になろう」または「小説を読もう」というサイトにも投稿していましす。盗作を掲載していると思われてはいけないので、双方の作者が同一人物であることをご承知おきください。

 

     「トウモロコシをくれた大男」

        

 

   まだ、小学校に通っていない宗一は、昭和のなかごろ山間小さな村で生まれました。

 お父さんとお母さんが、畑仕事をしている間は、牧草畑につながれている、家の子牛が遊び相手でした。

 そして、この地は遠い昔、「でえらんぼう」という大男の歩いた跡だという話を、宗一はお母さんから聞いていました。

 そういわれてみると、この地は、山の中でも比較的平地で、大きな足の形に見えるのです。

 

 食料以外にも、甘いものが尊い時代だったので、宗一と同じ世代の子供たちは、野イチゴやグミ、桑メドを見つけると、それは美味しいものに思えたものでした。

 宗一はいつものように、牧草畑で牛と遊んでいて、あまりにもポカポカと暖かい陽気だったので、横にになって反芻している牛のお腹を枕に眠ってしまうこともありました。

 

 そして、宗一は時々冒険もしました。

 それは以前、お母さんと一緒にキノコ採りに行った山道に行ってみたり、西の山の向こうにある池に行ってみることでした。

そして今日宗一は、まだ行ったことのない東の山にいってみることにしました。

 宗一牧草畑から、しばらくなだらかに上ると、こんどは長い下り坂になりました。

 その山道が、どっちに行っても見たことがない景色になって、宗一は、怖くなってそこにしゃがみこんで、泣き出してしまいました。

 

 すると、遥か遠くからドシーンと地響きがしました。

 しばらくすると、また、ドシーンと地響きがしました。

 今度は三回目、宗一の近くで地面が揺れるほど大きな地響きがして、四回目も同じ辺りで起こったのです。

 

 宗一は、地響きがした方角をしゃがみこんだまま、恐る恐る見てみると、東の山の方角に、太いすね毛の生えた何とも大きな二本の足があったのです。

 

 宗一は驚いて、尻餅をついて上を見上げると、とてつもない大男の姿がありました。

 髪の毛はボサボサで、口の周りから顎にかけては髭もじゃで、丈が膝まである、動物の毛皮のような物を左肩から掛け、腰の辺りを、太い縄のような物で巻いていました。

 

 宗一は、その男の大きさに腰を抜かすほど驚いたが、その大男の顔はどことなく間抜けで、愛嬌さえ感じるのでした。

 しばらくの間、その大男を眺めていた宗一は、お母さんが時々話してくれた伝説の大男でえらんぼうを思い出した。

 

 すると、大男は懐から何かを取り出して、前かがみになって、大きな手のひらにのせて、宗一の前に差し出したのです。

 宗一は、恐る恐るその手のひらを見ると、蒸したばかりのトウモロコシが二本載っていました。

 

 大男は、宗一に(食べな)と言うように、顎を突き出してニコッとしました。

 宗一は、膝をついて立ち上がって、大男の手のひらの上の、トウモロコシを両手で受け取ると、思いきりほおばった。

 そのトウモロコシは、甘くてモチモチでそれは美味しかった。

 

 宗一はあの山道で、大男からもらったトウモロコシが、頭から離れないので、あくる日、お父さんとお母さんに、トウモロコシを食べたいということを伝えました。

 すると翌日、お父さんは、街に買い物に行って、大豆とトウモロコシの種を交換して帰ると、早速、畑に播いてくれました。

 

 そして、八月になると、標高が高くて、寒暖差のあるこの地では、甘くて美味しいトウモロコシが実った。

 秋もまだ早いころ宗一は、また一人で東の牧草畑を通って、以前大男に行き会った林道に行ってみました。

 

 そして宗一は、少し開けた場所の草の上で、大の字になって休んでいると、ドシーン、ドシーンという地響きがした。

 宗一はとっさに、いつかトウモロコシをくれた、あの大男にちがいないと思った。

 

 大男は、山道の開けた草の上で、あおむけに寝ている宗一を見つけて、そーっと両手で抱き上げて、男の肩に乗せてくれました。

 宗一は、大男の耳元で「モロコシうまかった」とお礼を言うと、大男は大きな声で、「ワッハッハッハッハー」と笑うと、宗一も楽しくなって、「アハハハハ」と笑った。

                                                                                                           里山 根子君 著                                                                                           

 

 

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