夜、車を止める美女

今週のお題「怖い話」

 

 「上州村のことじゃった・・・・。」は、あるCMになってしまいますが、群馬県下 仁田町のお話です。

 

 今から35年ほども前のことになると思います。自分が22年務めた前の会社の高崎の工場に、一年間教育で行っていたころ聞いたお話です。

 

 群馬県 下仁田町から長野県 佐久市につながる国道254号線は、今では広くて良い道路になっていますが、当時は、下仁田町を過ぎると急に狭い道路になってしまうのです。

 週末は実家のある佐久市に帰るのですが、1日終えて帰るとこの辺りを通る頃はすっかり暗くなってしまうのです。

 道が細くなってしばらく進むと、赤い橋があってそこだけ何故か街灯があるのですが、何も知らずに通っても何とも心細くなる風景です。実は樹木に隠れて見えないのですが、この橋の下は深い谷になっているのだそうです。

 この辺りに差しかかると、ラジオも音楽も心細くなって息を殺して通っていた覚えがあります。当時、アマチュア無線に夢中になっていましたので、関東エリアの皆さんと交信しながら運転していたのですが、この辺りに来るとロケーションが悪く、関東エリア、信越エリアの無線局とも交信できなくなってしないます。

 

 これは地元の友人から聞いた話なのですが、夜この赤い橋に若くてきれいな女の人が立っていて、通る車を止めて「〇〇まで乗せて行って下さい。」と丁重にお願いするのだそうです。遥か前に聞いた話ですので、流石にその地名は忘れてしまいました。

 運転者はその目的地を通るか、若しくは近くに行く場合は親切に乗せてあげるのですが、しばらく進むとルームミラーに移っていた女性の姿は消えていて、女性の座っていた座席が濡れているのだそうです。

 

 そこまでは、よくある話だくらいに思っていたのですが、高崎の社員寮で一緒に教育を受けている同僚たちと、夜一杯飲みながら怪談話で盛り上がったことがありました。そこで驚いたのは全く同じ話をこの晩、群馬県に住んでいるこの同僚から聞いたということです。

 こういうことが起きるようになったのは、ある事故が起きてからなのだそうです。群馬県側から車を走らせていた若い女の方が、その橋辺りにを通りかかった時、ハンドル操作を誤って深い谷に転落して亡くなってしまったのだそうです。

 

 その女性が群馬県からどこに向かっていたのかは知る由もありませんが、あまりにも無念でお気の毒に思ってしまいます。「南無阿弥陀仏」「南無阿弥陀仏」合掌

 

 

人から聞いた話ばかりですが、この話をしてくれたこの同僚から聞いたもう一つの話です。

 釣り好きの友達がいて、夏になると利根川にアユ釣りに行っていたときの出来事なのだそうです。

 葦が背丈の2倍以上もはびこる、自分だけが知っていてめっぽう釣れる場所があったということですが、その日も朝から好調で型のいいアユがたくさん釣れていたということでした。

 天気は良かったのに、急に辺りに霧がかかって陽はすっかり隠れて、ひんやり感じたということです。しばらくすると、水辺の方から「ガシャ!ガシャ!」という音が聞こえて、徐々に近づいて来たということです。その友達は怖くなって、霧の中に目を凝らして透かすように水辺を見ると、甲冑姿の武将達がその友達のほうに向かってくるのだそうです。その友達は、慌てふためいて転がるようにその場から逃げたということでした。

 しばらくして霧も晴れたので、大事な道具もすっかり置いて逃げてきたので、恐る恐る釣り具を持ちに戻ってみると、あれほど釣れていたオカンの中のアユは一匹もいなかったということです。