死ぬまで山歩き(2)

 9月に入り、農作業も一段落したので、今度の休日は山に行こうと思いつつ、フェイスブックでキノコを採った方からのメッセージをいただいたり、家の周りの草が気になったりで前日まで迷っていたのですが、明日土曜日は天気もよさそうです。日帰りだし、大方の荷物はいつもリュックの中に入っているので出かけることに決めました。

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 登山口の大河原峠に向かう途中に、新しく建設中のJAXAの宇宙空間観測所があります。同じくJAXAの臼田宇宙空間所のパラボラアンテナの老朽化に伴い、その後継施設として活躍していくことでしょう。
 パラボラアンテナの口径は54メートル臼田宇宙空間観測所のパラボラアンテナの口径は64メートルなので、ちょうど10メートル口径は小さいのですが、性能はかなり向上しているということです。

 ここで車を止めたのには、もう一つの理由があります。今日は滅多にない好天だったからです。空は青く澄み切って、東は浅間山から西は穂高の峰々までくっきり見えていました。ここでまた、心に雑念が入ります。

 今日は、大河原峠から双子山、双子池、亀甲池と回って大河原峠に戻るコースに決めていたのですが、これだけ天気がよければ蓼科山に登ってみようか?などと思い立ってしまいました。

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 合掌したように尖った赤い屋根の、「大河原ヒュッテ」が見えてきました。大河原峠に着きました。大河原峠のシンボルのような「大河原ヒュッテ」は、個人的に大好きな山小屋です。大河原峠は、すでに車がいっぱいでした。今日は登山者が多いようです。

 靴を履き替え、準備をしながら色々な雑念はありましたが、今日は去年11月の荒船山以来なので、当初の予定通り無理をしないで、ゆっくり双子池方面に行くことにしました。

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 大河原ヒュッテを後にして、双子山、双子池方面は東の登山道を進みます。因みに蓼科山は、西の登山道を進みます。

 歩き始めてしばらくする と、俊敏な飛び方をする蝶を見つけました。タテハチョウの仲間に間違いありません。最初登山道の湿った石に止まったので、息を殺して近づいてみるとヒオドシチョウでした。以前は家の周りでも時々見かけましたが、ここ数年は姿を見たことがない気がします。

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 蝶に夢中になって 、やっと何とか判別できる写真を撮って、今登ってきた後ろを振り返ると、右手に北信五岳と左手蓼科山の裾には、白馬の峰々が遥か彼方に見えていました。

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 マツムソウが、たくさん咲いている景色を想像していたのですが、残念ながら少し遅かったようです。それでも何とか花の咲いているのを二株見つけました。この薄紫の花が至る所に咲いている光景は、正に天国のようです。

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 コケモモは赤い実を着け、ガンコウランは黒い実を着けていました。このガンコウランツツジの仲間だと言われても、分類を間違えてしまったのではないかと疑ってしまいそうになりますが、花の咲いている時期に見ると頷けるかもしれません。

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 少し汗ばんで歩くのも慣れてきたころ、双子山の最高地点が見えてきます。

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 リュックを置いて、滅多にない景色をゆっくり楽しむことにしました。東には奥秩父の山々、金峰山の五丈岩も確認出来ます。

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 北には浅間山に続く峰々がくっきり見えました。

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 西は目の前に蓼科山が堂々とそびえ立っています。

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 南も目前に北横岳、大岳がそびえ立っています。

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 そして、北横岳から蓼科山に続く稜線の最低鞍部には、中央アルプスの山々がすっぽり収まっていました。

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 かわいい石の祠と蓼科山を撮ってみました。双子山の三角点からしばらくは高い木はなくて、ほとんど平に進みますが、ちょっとしたアルペンムードが味わえます。

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 自分はこの辺りの高原特有の匂いが好きです。土なのか、樹木や植物から発せられものなのか、あるいはそれらの全てのものが複合された匂いのでしょうか、瓶詰めにして持って帰りたいようです。

 この辺りには今、腹部の赤いトンボがたくさんいますがアキアカネです。暑さに弱いアキアカネは、初夏にもっと標高の低い平地で羽化するとすぐに長旅をして、標高2000メートル前後の高原で過ごします。秋になって、生まれ故郷の平地が涼しくなると、高原から平地に帰って産卵の準備をするということです。高原で体色が黄土色から赤色に変わって、体が十分成熟してからの時期ということにもなるようです。 いまここにいるアキアカネたちも、もうすぐ生まれ故郷の平地に戻る時期だと思います。

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 ゆっくり景色を味わいながら進んで行くと、登山道は下り坂になると同時にコメツガ、シラビソ、カラマツが多い原生林に入ります。北八ヶ岳の魅力の一つは、このような針葉樹と大きな石に苔生した原生林だと思います。下り坂の途中の大きな石に、かわいいシダの仲間が生えていました。

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 カラマツに絡み付いている、仙人の髭のようなものはサルオガセです。霧の多く発生する高原に見られる地衣類で、日本には40種類もあるのだそうです。食べられるということですが、あまり美味しそうには見えない気がします。

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 この辺りは、コメツガ、シラビソが少なくなると同時に天然カラマツと、背の高い笹が多くなります。登山道も下りがきつくなりますが、しばらくすると、双子池ヒュッテに着きます。

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 道草を食いながらゆっくり歩いてきましたが、まだお昼にするにはさすがに早いので、ゆっくり景色を楽しむことにしました。

 雄池は双子池ヒュッテの飲料水として使われていますので、飲食が禁止されています。更にカメラ以外の荷物も持ち込めないことになっています。

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 きれいな水をたたえる雄池ですが、右手奥に数年前の大雨の傷跡が痛々しく残っています。ちょうどその年の秋、同じコースを家族で訪れたのですが、底まで透き通って見えるほどきれいな水がすっかり濁っていました。

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 しかし何時来てもきれいなところです。以前、水中でサンショウウオを見つけたことがありましたが、今日は見つかりませんでした。右に進んだ先に、オオルリボシヤンマが数頭飛んでいました。時々縄張り争いをしていました。オニヤンマのように、時々木の枝にぶら下がるように休んでくれたらいいのにと思いつつ、カメラを構えていたのですが、そんな気配は更々ありません。とてつもない体力の持ち主で何と4時間以上も飛び続けて、休むのだということです。縄張りに入ったものは、鳥でも向かっていくことがあるようです。

 ホバリングする時間も一瞬で、目の前を飛んで行くこともありましたが、なかなかカメラに収めるのは至難の業です。

 双子池ヒュッテの下の平地に置かれている、木のテーブルと椅子で画像を見てみました。トンボらしき生き物が飛んでいるようであることは何とか分かりますが、とてもそのトンボの種類まで分かるようなものではありませんでした。

 がっかりして、ボーッと景色を眺めていると視界の右隅に、羽の縁が白っぽい蝶が俊敏に飛んで行きました。何十年という記憶の中に、図鑑以外でこのような配色の蝶を見た記憶がありません。あの俊敏な飛び方は蛾とかのものではなく、間違いなくタテハチョウの仲間の飛び方です。

 高岡市で行き会ったアオスジアゲハと同じく、図鑑では穴の開くほど見ていたので、すぐにその蝶が何かは分かりました。それは間違いなくキベリタテハでした。この蝶もここで生まれて初めて行き会いました。またもや心臓ドキドキしながら、必死で今視界に入った蝶の行方を追いかけました。

 すると比較的近くのこの平地から、双子池ヒュッテの間の高い土手の中ほどに、土のえぐれたところがありました。その少し凹んで黒い火山性の土がむき出しになったところに止まりました。この場所で給水することにしたのだと思いますが、息を殺して土手をよじ登りました。
 この1頭に近づく間、更に上の山小屋の方に同じキベリタテハが飛んでいました。生まれて初めて行き会ったキベリタテハが、目の前に2頭も現れたのですから、虫好き人間の頭の中はすでにパニック状態です。
 しかし「2頭追うもの3頭得る」なんて聞いたことがないので、ここは冷静に目の前の1頭に集中することにしました。タテハチョウの仲間は警戒心が強いので、逃げられるかなと思いましたが、結構近づくことが出来ました。しかしそれが仇になったのか、少し手前では開いたり閉じたりしていた羽を開かなくなってしまいました。
 仕方なく持久戦に持ち込もうと思いきや、あっという間に逃げられてしまいました。何とかその蝶だということが確認出来る程度の画像は撮れましたが、記録として残しておくことにします。本州では1500~2500メートルの広葉樹林帯に生息しているということなので、自宅付近では見かけなかったのは当然と言えます。

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 1時間ほどゆっくりしまして満足な画像も撮れませんでしたが、ここに来るとオオルリボシヤンマとキベリタテハに行き会えることが分かっただけでも大きな収穫と言えます。雄池と双子池ヒュッテを後にして、雌池を左手に見ながら亀甲池を目指しました。ここ雌池では、決められた場所にテントを張って泊まることもできます。そして雌池も一時期より、水がきれいになったようです。こちらの池には、フナなどの魚も生息しています。

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 雌池を後にして、亀甲池までの上りになりました。この登山道はコメツガの中の苔生した大きな石の間を上りますが、いつも 石の表面は湿っていて滑りやすいので注意しながら進みます。

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 かわいいコメツガやツツジの仲間が、石の上の苔の中や倒木に生えていて、苔玉ミニ盆栽にも劣らない小宇宙のようです。ゴゼンタチバナにタケシマランは、かわいい赤い実を付けていました。

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 足元に注意して、楽しみながら上って行くとピークに差し掛かります。ここから少し下ると亀甲池に到着します。


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 丁度お昼時だったので、景色を眺めながら適当な日陰を見つけてお昼にしました。オニギリをいただきながら、トンボやハナアブに見とれていたら、知らないうちにペットボトルのお茶が倒れていて、そのほとんどが地球に戻って行きました。

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 ゆっくりお昼をいただいて亀甲池を後にします。以前双子池から天狗の路地を経て、大岳、北横岳に上って亀甲池に下ったこともありました。

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 しばらく下ると、目の前に蓼科山が視界いっぱいに見える開けたところで、休憩していた女性に声を掛けていただきました。やはり単独登行で大河原峠から蓼科山に登って、この後は自分と逆のコースで大河原峠に戻るのだということですが、すごい健脚な方だと思いました。しばし色々話をしましたが、蓼科山頂上はやはり、360度大パノラマだったということです。双子山からの眺めの中で、蓼科山の南の稜線の脇に微かに白山も見えました。という話をしましたが、大変な失礼をしました。あれはたぶん、乗鞍岳だったと思います。何だか久しぶりに山に来たせいか、乗鞍岳だか白山だか分からなくなっていました。万が一自分のこのブログを見る機会がありましたら、この場を借りてお詫び申し上げます。しかもこの方は先日、白山に登ったばかりだということでした。多分かなりの登山歴を持っておられる方だと拝察しました。

 そして、この辺りでは以前クジャクチョウに頻繁に行き会ったのですが、花も少ないせいか今日は見かけませんでした。そういえば最近、家の周囲でもクジャクチョウを見なくなった気がします。

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 しばらく下って、ほとんど水のない河原を横切ると天祥寺原に着きます。


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 ここからは大河原峠まで、なだらかな上りになります。もう少し早い時期には色々な花を見ながら歩けるのですが、この時期は低い笹の葉の間に、時々かわいいエゾリンドウが咲いているのを見つけることができます。


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 今日は、最近一緒に登っていただいている会社の友達も用事があって、ご一緒出来なかったのですが、久しぶりに一人歩きになりました。
 個人的に大好きな北八の池巡りコースを歩きましたが、最近は運動不足が祟って少し太り気味です。農作業と運動はやはり、根本的に違いますので、今日行き会った蝶にトンボに花そして、その頂でしか見ることの出来ない眺望を見るためにも、足腰が衰えないように努力したいと思いました。